きんぴら通信。2009年11月号

  • 『石拾いをしてきました』 by店長
    息子の葉君と二日間の石拾いをしてきました。先日の日曜日は月に一度の休日で、京都にいる大地君の引越しの手伝いに息子と軽トラを走らせ行って来ました。せっかく京都まで行くのだから途中で何処か石拾いの出来る所があったら行こうと息子を誘ってみると、じゃあ調べてみるねという事で、岐阜の山奥にも出掛けることになりました。蛍石が拾えるそうです。
    年をとるたびに長距離の運転がつらくなってきました。高速料金はもったいないので、下の道を休み休み行くことにしました。5時間ほどで肩と首と腕が先ず痛くなり、京都へ行くだけで結構体はつらくなっていましたが、帰りの寄り道の変更はありません。二日目は左目と左足も加わってつらくてしょうがありませんでした。引越しの日は幸いにして曇りだったのですが、引越しが終わった夕方から雨が降り始めました。どうやら台風の影響だそうでこれから風も加わり天気はひどくなると天気予報で言っています。普通だとこういう状態を泣きっ面に蜂と言うのでしょうが、パン屋と農事でいつも時間に追われている者にとっては、泣きっ面に貴重な遊び時間であります。
    国道から外れて県道市道と明るくなり始めた朝の道を走りだすと、地図を持っていない者の嵯峨かどうしても不安と迷いで車を走らせるのである。
    コンビニのアルバイト高校生らしき女の子、道路端を歩いていたおばさん。みな親切でした。山や谷も迫ってきて、人通りも家も少なくなり、似たような山奥の狭い道を何度も曲がりどっちが本道なのか判らない交差点で、近くのお店のおじいさんらしき人に声をかけました。
    『この辺に小学校がありませんか?』おじいさんはすぐに僕達の目的を見抜いて言ったものです。
    「蛍石を拾いにきたんかい 小学校はこの先にあるけれど、今は使っていないよ 蛍石も観光バスでいっぱい人が来て拾って行ったでもう無くなってしまって今はもう拾えないよ、行っても拾えないよ」
    『そうですか そんなにいっぱい人が来てたんですね せっかく遠くから来たので行ってみるだけいってみますね』
    「もし拾えなかったら帰りにでも寄ってみろ 俺が拾ったのがあるで見せてやるわ」
    『ありがとうございます 何にも拾えなかったら寄らせてもらいますね ありがとうございました』
    現場はやはり多くの人が石拾いに来た形跡が多く、始めは紫や青い色を帯びた石など少しも見当たりませんでした。1時間ほどしてやっぱり無いねといいながら帰ろうと思いましたが、葉君の持っている資料に比較的右側にはまだ少し有るような事が書いてあったので、その辺だけもう一度チェックして帰ろうかとなり、細かな石を見直してみるとうっすら紫色や緑がかったものが拾えました。本にあるようなものは見つかりませんでしたが、細かな小さなかけらでも十分楽しめました。
    息子の葉君は夜のクラフトマーケットに向けて石を使ったランタンを創りました。新潟の鉱山跡でその石を拾ったものですが、その時の話を聞いて僕も石拾いは結構趣味としては楽しい分野ではないかなと感じていました。
    確かな目的を持った小旅行が出来ます。お土産は買うのではなく、見つけるのです。それもこの世でたった一つのものです。行くまでの道中の移動も始めて行くところですから当然楽しいものですし、人の行かない所ですから冒険っぽい事もあるでしょう。
    石を拾ってからさて帰ろうとなったのですが、来た道を戻らずに長野方面、すなわち中津川方面へ抜けていくつもりだったのですが、どうやら同じ所をぐるぐると回ってしまっていないかと不安になり始め、話す内容も白い着物でも着た人が立ってたらどうしようかなどと冗談にしても良い会話ではなく、「こんな細い道でドンつまりにでもなったら2キロくらいバックしないと戻れないな」と話していたら、期待にこたえるようにドンつまりになってしまった。しかしながら幸いにそのドンつまりに牛を飼っている家があり、そこでスイッチターンをすることが出来ました。どう戻ったらいいのかそのお宅に声をかけました。
    家の前の土手はつい先ほど草を刈ったばかりというようにきれいに坊主にされており、雨上がりの湿気と切り草の匂いも漂っています。大きな牛の鳴き声がすぐ裏手の牛舎から聞えてきます。静かな所です。土蔵の前を通って母屋の玄関戸を開けて声をかけてみました。
    『ごめんください ごめんください ごめんください』  しばらくすると中から女の人の声がしました。昼寝をしていたようで髪の毛を手で軽く整えながらちょっとめんどくさそうな目で僕を見ながら「なんでしょうか」と声を返してくれた。
    『道に迷ってしまったので道を教えて欲しいのですが』
    「どちらへ行くんですか」
    『中津川へ行きたいんですけれど』 と話すとめがねをかけたそのおばさんは中津川へ行くにはまったく違うしよくもまあこんな山の中にまで来たものだと思ったのだろう、下を向いてくすっと笑った。おばさんは農家の人らしくなく、丁寧な言葉使いで「どちらから来ました? 南の方から来たんですね」 
    僕はどっちが南か北かは全く判らない状態だったので『坂の下の方から上ってきました』としか答えられなかった。やっぱり全然方向違いだわよという笑みを浮かべながら『金山の方へ一回戻って下呂に行ってから中津川へ行った方が判りやすいわね』 そういって簡単な地図を小さなメモ紙に鉛筆で書いて渡してくれた。草刈の後小休憩に昼寝をしていたのだろう。せっかくの所を起こしてしまったのに、丁寧に道を教え
    てくれて、本当に感謝であった。
    おかげで国定公園の細い渓谷沿いの紅葉できれいに染まった道を車で走り、国道にたどり着くことが出来た。
    この渓谷には3・4キロの間に滝が4つも有り、遊歩道も整備されていて結構観光客が訪れる所らしい。ハイキングで歩くにはとてもいい所だった。歩いている時間が取れないのが残念であった。
    京都を朝3時に出て、家に着いたのは午後2時ごろであった。30分ほど昼寝をしてからパン工場へパンの仕込みに出掛けた。結構ハードな動きで体はいたってきつくなっていたが、次の日のパンの仕事が終わった後また葉君と石拾いに出掛けることとなった。
    今度は葉君が「農事もひと段落たっているし、俺石拾いに出掛けようかなぁ」 と言うではないか。
    『どこへ行くんだい、例の佐久方面かい』 と聞いてみるとそうだと言う。
    黒曜石のようなので青みがかった物や変わった石が取れると言うので、体はつらかったが面白そうなのでついて行く事にした。何でも3箇所も廻ると言うので、午後はまたパンの仕込みなので早く帰るために朝ではなくて今日の夕方に出発して現地でテントを張って朝から拾うことにした。
    前日からの疲れが取れていない店長にはまたまたきついドライブとなっていた。
    塩尻からは峠を越えて岡谷に行き、岡谷から武石峠を超えて佐久に向かうことになる。途中の難所は和田峠であった。新和田トンネルを越える手もあるが、有料なので旧道の峠道を超える事にした。夜の峠道でその上狭いのに大型車が結構通るのには驚いた。時折道の端によってやり過ごすこともしながらの峠越えであった。首と肩の痛みもひどくなってきていた。峠を越えたところで持ってきた鎮痛剤を塗ってホッカイロも貼り付けてからドライブを続けた。『んん、結構効き目あるなぁ』痛みはず
    いぶんと和らいでこの調子だと大丈夫である、が目が痛くもなってきていた。夜の走行はやはり目に来るのだった。
    目的地は乙女の滝と言う所で十国峠の途中であった。その場所には3時間あまりで着いた。夜の7時半頃だった。思ったよりも順調にたどり着いたが、遠く谷底からの水の流れる音だけで、近くの虫の声や鳥の声など何も無く、どうにも静か過ぎる場所である。少し気持ち悪かったが車を道路端の空きスペースに止めて荷台に寝床を作ってから寝袋に入って寝始めた。葉君と自分の寝息を聴きながら静かにしていたが道路下の方からふと低いうなり声のような声を聞いた気がした。眠気がさっとひいてしまった。この続きは怖いのでカットしましょう。
    結局宿泊地を変えることにしました。さっさと移動しました。
    ここらあたりには鉄平石が取れるそうで、取扱店の看板が眼に入った。基本的に石拾いは掘ったり入ってはいけないという危険な場所へは行かないでやろうと決めている。重機やつるはしなどを使って地形を変えるほどの行為をして取っていく常識はずれもいるようで、そういった者のせいで立ち入り禁止地区も増えてしまい、まともな石拾いを趣味としている人は迷惑をしているそうだ。しかしながらおいらとしては河原でのんびりと卵石やきれいな石を拾う楽しみを取り戻したかったような気持ちでいる。小学校1年の頃学校の行き帰りの道で広い道が出来、その道に砂利が敷かれたのです。当然行き帰りに石拾いが道草遊びになったわけです。きれいなキラキラする石や字の書ける石やかたちの変わったのや、母ちゃんにはこんなに石ばかり拾ってきてと小言を言われていたが、この遊びが飽き
    るまでポケットの中にはしばらく石ばかりがいつも入っていたのでした。
    さて、明るくなってから乙女の滝の現場に行きまして、石拾いをしたのです。いろんな種類のものがあるのではなく、ガラス質の緑がかった石を拾うことが出来ました。
    ポケットに5個くらい入れてから、紅葉もきれいだし、滝の方も一回りして次の場所に移動することにした。遊歩道は比較的歩きやすく、朝のさわやかな空気が流れて鳥の声も多く空気も気分は昨夜とは打って変わっていた。
    次の場所は丸子町の河原である。
    晴天に恵まれすぎて暑すぎる感もあるが、子供の頃の河原の石拾い気分で楽しい。いろんな石が転がっている。ここではハンマーを使って割って、きれいな水晶体が挟まったものを見つけようという訳だ。思惑通りのものはそう簡単には見つからなかったが、子供の頃を思い出しながら小さな卵形の色の変わったものを沢山ポケットに入れて帰ってきた。
    あれから1週間経って体は順調に回復してはいないのである。重い大豆や小麦粉を持ち上げるたびに左腕が悲鳴を上げている。たかが石拾いだったが、2日で5年分また寿命を縮めた気がしているのだが、好きでやっちまったんだからしょうがない。
  • 「お知らせ」
    ■自農園の無農薬栽培コンコードソースがたくさん出来ましたので、しばらくの間くりーむパンのクリームをぶどうくりーむにしております。甘すっぱさとぶどうの香りが魅力的です。
    もう少し経ったらりんごクリームパンの登場です。お楽しみに。
    ■フェアトレのスイスチョコレートも入荷いたしました。黒糖とオーガニック材料を使ったスイスの手作りチョコです。とても健康的で美味しいチョコレートです。
    ■スイスチョコを使ったパン、くすすたるかも作り始めました。こちらもよろしく。
    ■農事のほうは麦の通りの間の除草作業が始まります。小型管理機を使っての作業となりますが、今年から面積が広くなったので大変です。
    お手伝いしてくれる人がいたら連絡をください。晴れの平日作業となります。
    ■今月の定休は11月29日となります。
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