きんぴら通信。2011年11.5月号

  • 『三匹のこぶた』 by葉
    家をつくる上で、何が一番重要か?
    間取り?デザイン?やっぱり予算?
    自分はそうは思わない。肝要なのは耐久性、個々の部品の材質だ。
    今の世の中……特に機械製品に多いが、兎に角、すぐに壊れてしまう。
    しかも殆ど修理が効かない。
    たった5年しか経ってないのに、部品が無いとか馬鹿げてる。
    孫の代まで使い続けられるコンピューターが無いというのも、考えてみれば粗末な話だ。
    どんなに機能が立派でも、すぐ壊れては仕様がない。
    長持ちこそが一番の価値。使い捨てなど真っ平御免だ。
    生活の基盤である家の素材は、軽く解ける藁でなく、たやすく割れる板でもなく、一つ一つがみっしり詰まった、丈夫な煉瓦であるべきだ。
    でなければ、オオカミ達に吹き飛ばされて、あっという間に喰われてしまう。

    今、この国は一つの分岐点に差し掛かっている。TPPという問題だ。
    ニュースに疎い人間でも、一度は聞いたことぐらいはあるだろう。
    そして、同時に、何やらキナ臭い気配も薄々感じているんじゃないかと思う。
    最初に結論から言ってしまおう。
    TPPはハッキリ言ってよく分からない。
    良いのか、悪いのか?メリットの方が多いのか、デメリットの方が多いのか?誰が得をして、誰が損をするのか?
    食料自給率。
    地域農業だけでなく、医療保険の分野においても壊滅的な打撃を受ける……かもしれない。
    地方の公共事業。
    学校給食や使用教科書までも、海外企業に乗っ取られる……可能性もある。
    いろんな意見が出されているわけなんだけれども、肝心要のTPPの内容は現段階では協議中。
    要するに、まだ決まっていないことが多すぎて、現時点では何とも言えない、
    いや、何とでも言える状態なのだ。
    だから、可能性の話や仮定の話は出来るけれども、最終的にどんなカタチに決着するかは、未だ誰にも分からない。
    それが今のTPPに対する自分なりの認識だ。
    とはいえ、そんな状況下でも確かに言える事はある。
    それはTPPの方向性だ。障壁を無くした自由貿易。無慈悲無法な経済活動。
    資本主義という運動を、更に一歩推し進めようということだけは、どうしようもなくハッキリしている。
    そして、それは別にTPPに限った話という訳じゃない。
    広がり続けていく格差。強者に都合のいい政治。
    罪のない個人が逮捕され、殺人を犯した大企業が大手を振って踊る社会。
    持ちすぎて余裕を無くした人間と、持たなすぎて余裕を無くしてしまった人間。
    TPPが断行されようがされまいが、最終的には関係ない。
    遅かれ早かれ、この国は、余裕を無くしてしまうだろう。
    誰もが他人を支えられない。
    死にいく人を救えない。
    近い将来、個人が一人で生きなければならない時代がやって来る。
    心細いし、嫌だけど、そんな風に思えてしまう。
    自分たちは、家を吹き飛ばされたこぶただ。
    国という、身を守る家が崩れた以上、じっとしている訳にはいかない。
    これから先は、自分の身は自分で守る。
    衣、食、住といった基本から、報道、倫理、医療といった専門まで、
    他人に任せていた事も、個人個人がこなさなければならないだろう。
    見て、触れて、味わって、時には嗅いで、聞きとって、
    一人一人が自律して、考え、行動していくことが必要だ。
    ――食事。
    自分を頼りに生きていく以上、何より身体が一番の資本だ。
    放射能という新たな脅威が増えてしまった以上、健康的な食生活を送ることがより一層重要になってくると思われる。
    ――持ちもの。
    余裕を持って動くためには、荷物は少ないほうが良い。
    優先順位の高いもの、質の高いものだけを求めていくべきだろう。
    ――徒手空拳。
    力が弱いということは責任を持てるということだ。
    個人の微力を誇りに思えるようになりたい。
    ……などなど。
    取り敢えず、自力で出来ることを増やし個人の質を上げていくことが大切だ。
    小粒ながらもミッシリと、中身が詰まった人間になろう。
    そしていつか、腹を空かせたオオカミ達から、逃げ切ることができたなら、
    その時は、
    もう一度、新しい家を建て直そう。
    ひとつひとつ丁寧に、個人の絆を積み上げて、丈夫な煉瓦の家を築こう。
    別に小さくたっていい、不細工だって構わない。
    狭いながらも楽しい我が家だ。
    風が吹いても飛ばされない、家族みんなが笑って暮らせる、
    高品質な、素敵な家を。
    夢見て今は研鑽しよう。それが今の自分に出来る精一杯の抵抗だ。
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