きんぴら通信。2011年11月号

  • 『冷たい雨が降り出しました』 by店長
    今朝も3時となると布団の中で横になっているのが辛くなってきて起き始める。ラジオでもつけて布団の中で聞き流しているのもいいが、克子さんの眠りの邪魔となっては申し訳ないので、決まって先ずはトイレに行く。便座に座ると首の運動から始める
    右、左、上、下、ぐるりとそれぞれ7回ずつ、肩の回転、足首の回転と10分くらいやっていると通りも良くなってきて今日も一日快調に動けそうな気分になってくる。途中、猫のハタがドアを引っかく音をたて、餌をよこせと催促して来る。
    田んぼの藁の片付けを雨が降る前にやっておかなければと思っているうちに、また一日が過ぎてしまう。今日は朝から動けそうだし、天気予報も長野県は降水確率30%。昼のうちは曇りで夕方から夜にかけて降りだすと言っていた。しかし7時半ころから雨は容赦なく降りだしてしまった。元気だったら雨の中をかっぱを着て作業をするのも楽しめそうだが、若いころと違って今はどうもそういった気分になれない。上高地や乗鞍では紅葉がそろそろ終わりそうだが、身の回りの田圃や畑や自宅の庭では今が紅葉真っ盛りとなっている。黄色く色づいた柿の実がやけに周りの風景に合って風情を醸し出しているし、桜の葉が真っ赤に染めた一枚をたまに下に落としている。ヘクソカズラの黄色とタデの赤い実が緑色した廻りの葉に色を混ぜ込むように秋を溶かし込んでいるみたいだ。
    原発事故が起こってしまったことをなかった事にすることは無理だが、最低でも市民の感覚で行政が動いていって欲しいと外を眺めて思ったりする。福島を追われ逃げ出すようにして他県に新地を求めた人達に対して、加害者である当事者たちはまだ何もしてくれないという記事を冷たい雨の日に目にする。国民から寄せられた、史上初という多額の義援金は直接そういった人々の手には届かず、行政という目のはっきりしないフィルターを詰まらせるだけだったのかと・・・。
    食品の安全性も、人の住む環境も、その安全基準は日本だけこの先も緩めて平気なのかと思うと全く政府も企業も信用ならないのである。それに加え市民の誰が考えてもこれからもどんどん出てくる放射能汚染土の保管場所あるいは捨場というものは、もう人が住めなくなってしまった原発事故周辺の地域しかないはずだが、それさえも決められない、実行できない行政とは一体誰のための行政なのかを私達に教えてくれているようだ。
    まともな市民議員はいないのか、議員たちよ、しっかりしろよ。やれよ。
    冷たい雨は当分止みそうもないようだ。
  • 『アトミックテレサ』 by葉
    あなたはバイクで旅をしている。
    雲が流れる秋の空。自由気ままな一人旅。
    日々の雑事に追われることない、開放的なゆとりの時間。
    最高だ。
    人影さみしい田舎道。そのうちトップリ日が暮れてきた。
    前方に見えた手頃な空き地で今夜はテントを張ることにしよう。
    木陰の下にバイクを停める。
    荷物を下ろし始めたが、何だかやけに肌寒い。
    ふと気付く。
    季節は10月、秋真っ盛り。
    それだのに、山の中にも関わらず鳥や虫の気配がしない。
    おまけに辺りの植物が妙な形にねじくれている。
    ウーン。……気味が悪いが、気のせいだろう。
    疲れていたということもあり、そのままそこで一泊した。
    悪い夢はみなかった。

    ――翌日、とある街中をぶらぶら散策していると、突然知らない人に呼び止められた。
    黒い袈裟を着たお坊さん。
    彼は恐ろしい形相で、ジロジロ身体を眺め回してくる。
    そしてあなたは言われるのだ。
    「貴方の背中に……セシウム137がついてる!」
    ショッキング!
    昨夜泊まった空き地はなんと、心霊(ホット)スポットだったのでした!
    地獄の釜が水蒸気爆発。
    幽霊の正体見たり放射能。
    絵空事でなく、そんな時代が来てしまいました。
    困った。
    霊能力者みたく放射能が見える人とか、どっかにいないもんですかね……。
    胡散臭い専門家、御用学者はあてにならないし。
    幽霊探知器、ガイガーカウンターはやたら高いし。
    お経を唱えて塩を撒いても、地面を削りとったとしても、キレイに成仏してくれないし。
    とり憑かれた、身体の中に入り込まれたと公言したら、気のせいだとか変人だとか、風評被害だとか言われるし。
    『目に見えないものは存在しないのと同じ』だなんて、被害を受けてる本人からすりゃ、たまったもんじゃありません。
    戦後、たかだか数十年で、日本は随分と生活スタイルが変化しました。
    テレビ。掃除機。冷蔵庫。
    溢れんばかりの電気の力で、夜も明るく夏も涼しい。
    海を埋め立てスーパー堤防。
    山をぶち抜きリニア新幹線。
    金と電気が有りさえすれば、出来ないことなど何もない。
    地震?津波?屁の河童。
    どうせ大した被害は出ない。
    科学の進んだ世の中に、想定外など有り得ない。
    幽霊なんてナンセンス。
    立派な大人なんだから、分からないものなんてない。
    原発事故から約八ヶ月。引っ張ってきた大人達は、目を背けたくなるほどに見苦しい。
    彼らは、自分が信じ頼りにしてきた原子力という体制が破綻崩壊したことを、未だに認められないでいる。
    剥がれ落ちた金のメッキを嘘や小細工で取り繕って、人の道を踏み外してまで、無理矢理、今の体制を存続しようと悪足掻いている。
    馬鹿馬鹿しい。
    電気にしても金にしても、そんなに必死になりふり構わず、守り抱えるほどのものじゃない。
    仕事、恋愛、宗教、尊敬。依り所は人それぞれ、色々とあるけれど、結局はみんな心に余裕を生み出すための手段の一つでしかないはずだ。
    手段の為に目的を見失っては、本末転倒もいいところ。一点だけに頼るのではなく、もっと健康的な生き方をするべきだ。
    今の世の中、一本足で踏ん張っている唐笠お化けが多すぎる。
    何億という金を持っていても、余裕がなければ動けない。
    逆に荷物が重すぎて、転ばないだけで精一杯。
    粗末な話だ。
    必要な分の荷物だけ持ち、二本の足で地面に立てば、人はそうそう転ばない。片足ずつ足を持ち上げて、歩いて立場も変えられる。誰かが転びそうになった時、支えることすら可能となる。
    もっと、自分の身の程を弁えよう。
    支点を増やして、バランスをとろう。
    もう一度、幽霊を実在する脅威として、信じ語れる心の余裕を持ち直そう。
    分からないものは分からないと言おう。
    安全じゃないものは安全じゃないと言おう。
    それがどんなに怖くても。
    それが大人というもので、それが自立というものだ。
  • 「お知らせ」
    ★古本販売はじめました。
    ジョゼフウィルコンの画集や、柳田國男の『遠野物語 増補版』等あります。只今、童話の類を重点的に置いていこうと画策中。
    まだまだ冊数は少ないですが、ボチボチと時間をかけて増やしていきたいと思ってます。

    〈今月の一冊〉 『眼鏡』 島崎藤村
    『――そろそろそろお鼻に掛かりましょうかね。』
    ・眼鏡が主人公という、一風変わった大正の作品。
    旅をする旦那のオトモについてまわります。
    冷え暮れていく秋の夜。
    古い時代を感じ味わいたい人におすすめ。

    ★今月のきんぴらパン。
    縁の下の実力者……『ちーずあげぱん』
    地味なパンです。土曜日にしか焼かないし、数もせいぜい4個ほど。存在自体を知らない人も、結構いるんじゃないでしょうか?
    ところがどっこい。このパン、じつは大層美味しい奴なんですよ。きんぴら工房のパンの中で、自分が一番好きなパンと言っても過言ではありません。
    「うーん、前に一度食べたけど、そんなに美味しいんじゃなかったよ?」とか、思っちゃったそこの貴方。ひょっとして……、買ったその場で食べませんでした?
    当日焼きをいいことに、トーストしてから食べてないんじゃないですか?
    それじゃダメです。
    そんなんじゃ、揚げパンの真の実力は2割程度しか味わえませんよ!
    もちろん他のパンについても、焼き直した方が美味しくなるのですが、こと、揚げパンに関してはその重要度が違います。
    言うまでもないことですが、揚げパンというのは油で揚げます。そのため、他のパンと違って表面に油が染み込んだ生地となっていて、焼き直し時の表面と内側の焼き加減に驚くほどの差がつくのです。
    レンジじゃダメです、トーストです。
    頭が少し焦げるぐらいがGOOD。
    余分な油がジュワッと落ちた、表面カリッ、中ふんわりの絶品パン。
    後悔はさせません。
    未体験の方は是非お試しあれ。

    ★自家栽培の小麦粉を取り扱ってくれる方募集中。
    南部小麦、ライ麦、黒小麦、スペルト麦の全粒粉。最低3キロから対応可能。
    卸価格は定価の三割引です。
    詳しい内容はメールやFAX等でお問い合わせ下さい。
    メール:zouridaisuki@hotmail.co.jp
    FAX:0263-53-5494


    ★今年8月に収穫した麦の放射能検査を依頼しました。
    ・同位体研究所による総放射能量検査(放射性ヨウ素換算)で『不検出』という結果でした(※機器の検出限界が20ベクレル/キロ。実際の測定値が0ベクレル/キロ)。
    きんぴら農園の農産物をこれからも安心してお買上げいただきたいと思います。

    ★11月の出店イベント。
    ●カタクラモール ベーカリーオールスター
    ・地元のパン屋7軒が、一同にパンを販売します。
    【日時】 11月3日(木)、4日(金)、
            5日(土)、6日(日)
      午前10時〜午後7時、売り切れ御免。
    【場所】松本市 カタクラモール 一階催事場

    ★ホームページリニューアル。
    ・きんぴら工房のホームページをリニューアルしました。
    パンや小麦の通信販売、きんぴら通信バックナンバー、店長ブログや、原発関連情報など、様々な要素てんこもりです。

    自家栽培と天然酵母 農園パン屋きんぴら工房
    http://kinpira.zouri.jp/
    ※旧ホームページの頭からもとべます。
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