きんぴら通信。2011年12月号

  • 『楽して金儲けは本来つまらぬ事』 by店長
    お店の開店日をど・日曜日だけにしたのはいつだったか思い出せないが、随分月日が経った気がする。我が家で所持している広大な農林地は先代が弱っていくに従って此方側の肩にしっかりと移ってきたものだ。農地や水源管理をしている組合にも入っているので、作業や会議にも出てたまにはその役員も受けないといけない。
    高校の同級会での話だ。田んぼを持っていた友達にどんな様子か声をかけてみると、あんな事やっていたってしょうがないから駐車場にして近くのガソリンスタンドに貸しているという。楽で金になるからいいというのだった。
    『もったいないなぁ、米作りの楽しみを捨てちゃったってわけだね』喉まで出かかった言葉を飲み込んでいた。これから先も付き合う気のない相手にそこまで自分の意見をする必要は全くなかったからだ。高校の時にもサイクリングクラブを一緒にした仲だが、いつも楽な方へ楽な方へと行動をとっていたからつきあい方が遠のいた友達だった。この友達とはやはり基本的な考え方が違うんだなと繰り返し思っていた。
    農林地の管理者となったからには、肩にかかる重荷も前向きにこなして少しでも楽しくしたいものだと思う。と思って始めたのだったが、実際はこんなに楽しいことだったのかと思うことが多い。人との関わりは相変わらず上手く行かないことも多いが、自然相手の作業は自分にこんなに向いていたことなのかと改めて思う。ただ、若いころ無理して体を使ったツケが出てか、気持ちに体がついてこないのが残念だ。
    子供の頃から大事なことの1つとして衣食住ということが今よりもよく口にされていたと思う。着るものは支援物資の中でもやたらと多く集まり結局捨てる羽目になってしまうことが多い。着るものは周りの人に声をかければ貰い物で全て済んでしまうのではないかと思える。食は添加物が相変わらず多い。切り身で売られている魚の70%以上が添加物入りの調味液を注入されたものになってしまっている始末だ。多くの添加物は身体の免疫機能を高めている微量ミネラルを壊したり体の外に出してしまうので、多くの不調を訴える人も多くなるはずだ。昔は保存のための冷蔵庫など無かったから新鮮な野菜を八百屋で毎日買って食べていたので、身体のためにも良かったのでしょう。しかし、高度成長最中は化学添加物なんでもござれで、食にとっては今よりも最悪の時代だったのだろう。
    住はやはりひどい状態だ。プラスチックやベニヤ合板や連結鉄板をステンレスやアルミネジでビス止めされている。多くの化学物質過敏症の人を産み出してしまうし、耐久年数も30年持つだろうかというものだ。使えなくなったこの大きいゴミはその処分も多くの何万という本数の自然に帰らないネジだけ考えても頭が痛くなってしまうものだ。
    息子と話す会話の中に、長持ちするものでないと駄目だよね。あらゆる製品も生活スタイルも長く続くことを大事な基本的なスタンスとして人は向かっていってほしい。
    10年余りで製品の部品を作らないようにするなどということはあってはならない話だと店長は思っている。磨耗する消耗部品は一世代60年は提供して欲しいし、製品向上のための質を変える部品交換や構造改良はやむをえないだろうが、見た目のモデルチェンジなどはするべきでないと思う。
    エンジン部分だけモーターに変えて走っている車のように、ボディーなどそのまま使っても製品改良が出来るものは、そういうふうにして長く使っていく、進化させていく考え方が今必要な時代ではないかと思う。世の中を良くするのはお金を増やすことではなくて、物と人の動きを良くすることなのだ。
    それは、ごみになるものを増やすことでもなく、食事物まで腐らなく柔らかく味よく便利にすることではないのだ。真っ当な命をつなぐものをテーブルの器に出せる事なのだと思う。
    今年もあと1ヶ月となりました。年末は25日から冬休みに入ります。店長はせいぜい自宅の片付けに精を出して、松飾りも作って清々した気持ちで正月を迎えたいと思います。 
  • 『365歩』 by葉
    もういくつ寝るとお正月。いよいよ今月は12月。
    年の終わりが近付いて、来年の頭が見え隠れして来ましたね。
    大掃除やら、薪作りやら、大豆の刈り取り、麦の除草。きんぴら工房は依然、せわしなく毎日を送っています。
    あれ?なんか、去年もこんな事を書いていたような気が……。折角なんで、今年一年の出来事を振り返ってみようと思います。

    そんじゃ、まずは1月から……あ、どうやら1月4日には既に動き始めていたようですね。
    思い出しました。知り合いの大工さん、クリジャーさん特製の伝統構法小屋キットを組み上げ建てていたんでした。
    将来的には小規模に農業をする人に向けて脱穀機や精米機、製粉機などを貸し出せる、自給支援小屋にしようという企みなのですが、日々の雑事に囚われて中々進んでいなかったり……。反省。
    雪の中での作業。やたらめったら寒かった印象が強く残ってます。
    (ちなみにこの小屋キット、30万円で受注販売中です。興味のある方は問い合わせあれ。)

    次2月。干し野菜。
    ビニールハウスの中で、干しリンゴと干しダイコンを作ってました。
    体調を少し崩し始めていたこともあり、この頃は比較的大人しく過ごしてたみたいです。

    そして3月。大地震。
    当時は、店でパン焼き中。ドシンという音と振動が起き、思わず、店にトラックが突っ込んできたのかと思ってしまった。
    その後、ネット上で食料を送って欲しいという要請を確認したため、干しリンゴ入り全粒パンをアルミ袋で包み、被災地に送れるだけ送りました。
    全国各地、あちらこちらで、物資の買い占めが起こってましたっけ。
    田舎町であるここ塩尻の商店でさえ、ガスコンロや飲料水、ガソリンなどが一ヶ月ほど消えました。

    いつしか4月。心配だらけ。
    黒小麦が大ピンチ。新たに返してもらった畑の土壌が荒れていたためか、殆ど全て枯れ草状態。
    水やら肥料をパラパラ撒いて、なんとかかんとか復活させる。
    今後の放射能対策に備え、放射能を減少させるというトンデモ微生物や酵素水を活用し、農業や治療に役立てているという、埼玉県日高市の柳田ファームへ視察に行ってきた。
    話や見学に手応えを感じ、酵素水20リットル(1リットル120円)とバイオ肥料等を買って帰る。

    いそがし5月。苗作り。
    春から秋にかけての、果物、野菜、米などの苗や種蒔き、植え替え作業に追い立てられる。
    緑の勢いも増してきて、雑草の刈り取りも本格的になってきた。
    例年なら、そろそろライ麦が倒れ始める頃なのに、今年は倒れず頑張ってくれていた。有り難い。
    5月末日の松本クラフトフェアー。きんぴらにとって年に一度のかき入れ時なので、張り切って大量にパンを焼いたのだけれど……まさかまさかの台風直撃。
    お客が全く歩いていない!
    テントが風で飛ばされる!
    結局、売れ残ったパンを抱えて、ボー然とする羽目になった。トホホ。

    これで6月。折り返し。
    苗の都合で遅れた田植えもようやく完了。
    うす緑色の香り米は苗作りに失敗したため今回は脱落。
    農園で採れたいちごを使って、いちごクリームぱんを作ってみた。そんなに量は出してないので、人気かどうかは分からない。が、季節ごとに味のバリエーションが増えるのはいいことだと思う。

    いよいよ7月。麦の収穫。
    コンバインを使って各種麦の刈り取りにかかる。
    が、開始早々マシントラブル。
    藁が詰まると気が重くなる。
    機械の奥に詰まっていると小一時間は消費する。
    酷い時は取り除くだけで一日終わってしまうこともある。
    その後も藁詰まりが続出したが、スッタモンダの末に決着。
    ほっと、胸をなでおろす。今年も何とか収穫できた。
    年季の入った農業機械たちは、あと何年もってくれるだろうか……。

    節電の8月。そもそもクーラー持っとりません。
    塩尻社協の被災地ボランティアに参加しました。(活動の様子は、きんぴら工房ホームページで確認できます。)
    帰ってみると去年に続いて、今年もアメリカシロヒトリが大量発生!
    畑の柿や杜仲の枝葉に、茶白い糸がグルグルついて不愉快ったらありません。
    放置するとバンバカ増えてしまうので、高枝鋏で切り落とし、落ちたところを踏み殺しました。
    この害虫は暑いと発生するらしい。来年は収まって欲しいなあ……。
    あと、麦の販売価格の値上げをしました。
    市場価格に合わせた結果、ライ麦や黒小麦は高くなってしまいましたが、機械の修理代、購入資金等を考えると、ハッキリ言ってかつかつです。
    これから先も継続して作り続けていくために、ご協力をお願いします。

    気付けば9月。実りの季節。
    かぼちゃ、ぶどうを収穫し、焼きかぼちゃと、ぶどうジュースを作りました。
    毎年、これですなふきんと、ぶどうぱんを焼くのですが、ぶどうの奴はどういうわけか不人気で、あまり需要がない様子。
    うーん……旨いパンだと思うんだけどなあ……。
    何でだろ?
    あっ、ひょっとして、すなふきんが美味しすぎるせいなのか?

    とうとう10月。米の収穫。
    イベントの多い時期で、松本のクラフトピクニックや、きんぴら工房主催の夜の森のマーケットに参加した。
    去年、この空間で古本販売したら面白そうだなーと思っていたので、今年は古本屋をやってみたところ、やっぱり非常に好評だった。
    そんじゃひとつ本格的に始めてみようということで、きんぴら店内に古本コーナーができたという次第です。

    ようやく11月。小麦危機。
    突然、業者から電話があった。
    現在きんぴらで使っているパン用小麦が扱えなくなったという連絡だ。
    北海道産の小麦が減少しているため、商品自体が無くなってしまっているという。
    とうとうきたか、という感じだ。
    幸い、今回は代わりの粉として華梓という国産小麦を用意して貰うことができたが、この粉だっていつまで続くか分からない。
    今後、こういう動きは更に加速していくに違いない。
    これはいよいよ本格的に、自家小麦でのパン焼きを試みなければいけない時期に入ったみたいだ。
    そんなことを考えながら、せっせと麦の種まきをした。

    ……と、大小様々省きながらも、ざっとこんな感じの一年でした。
    変わったこと。変わらないこと。
    喜ばしいこと。腹立たしいこと。
    振り返らないと思い出せない、色んな事がありました。
    来年も一歩づつ、着実に歩いていける一年にしていきたいものです。
    それでは皆様、良いお年を。
  • 「お知らせ」
    ★古本販売はじめました。
    チェコの絵本作家ミルコ・ハナークの『青い鳥』や、武井武雄、初山滋等挿絵装丁の『小川未明童話全集』等あります。
    基本的には、絵本、童話の類が多め。
    農業関係の古本を増やしていこうかと画策中。
    最近、店内の本棚を増設しました。

    〈今月の一冊〉 『鬼桃太郎』 尾崎紅葉 
    『――苦桃の裏より生まれいでむとて苦桃太郎と名乗らせぬ』
    ・桃太郎が立ち去った後の鬼ヶ島。
    鬼の王の要請を受け、苦桃から生まれた鬼桃太郎がお供の毒龍、大狒々、狼たちと復讐のために立ち上がる。
    打倒、人間桃太郎!
    結末は如何に……。


    ★今月のきんぴらパン。
    正月に如何?……『餅食ぱん』

    お察しの通り、普段は殆ど焼いていないパンです。
    まあ、きんぴらにはそういう日陰者のパンが多いんですけどね……。
    『らいあん』とか『酒骨あんぱん』とか『なんなんだ』とか『ごぼう食』とか……。
    おっと、話がそれました。
    今回紹介する餅食ぱんは、無農薬有機自家栽培の炊いたもち米を練り混ぜた、ちょいと変わった食パンです。
    軽くバターを塗ってトースト、醤油を垂らして食べるとウマい。
    少し厚めに切るのがポイント。
    モチモチカリっとした食感です。
    これを食べたら、そんじょそこらの米粉パンなんか吹っ飛びますよ。
    おせちやカレーに食べ飽きた頃、正月のオトモに是非どうぞ。

    ★自家栽培の小麦粉を取り扱ってくれる方募集中。
    南部小麦、ライ麦、黒小麦、スペルト麦の全粒粉。最低3キロから対応可能。
    卸価格は定価の三割引です。
    詳しい内容はメールやFAX等でお問い合わせ下さい。
    メール:zouridaisuki@hotmail.co.jp
    FAX:0263-53-5494


    ★今年8月に収穫した麦の放射能検査を依頼しました。
    ・同位体研究所による総放射能量検査(放射性ヨウ素換算)で『不検出』という結果でした(※機器の検出限界が20ベクレル/キロ。実際の測定値が0ベクレル/キロ)。
    きんぴら農園の農産物をこれからも安心してお買上げいただきたいと思います。

    ★年末年始の営業について

    12月25日(日)から来年1月6日(金)まで冬休みとなります。今年も約2週間の冬休みをいただきます。前半ほとんどが片付け掃除、年始3日間はあいさつ回りと留守番。4日目から何をしようか。って、きっと必死にまだ年賀状を書いていることでしょう。
    どうか皆さんも体に気をつけてのんびりと酒を飲んだり家族とまったりと良い年越しを味わって下さい。
    来年も一層精進を怠らないように過ごせますように。

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