きんぴら通信。2012年5月号

  • 『田んぼ作業はじまる』 by店長
    先月から風邪のような花粉症のような症状を抱えながらいまだ脱出できずに過ごしている。
    桜の花が咲くと同時に毎年稲の播種作業を始まる。
    一般的にはもっと早くに始めるので、既に苗もハウスの中で大きく育っていて田植えの準備の方へと取り掛かっている頃なのだろう。
    6年ほど前だと5月の連休と言ったらここらあたりでは一斉に田植えをしていたが、此処数年は冷え込むことも多くなり田植え時期も連休すぎというところが多くなってきた。
    我がきんぴら農園では毎年5月後半6月初めのイベント参加のために田植えは駒ヶ根高原杜の市が過ぎてすぐに行うこととなっている。
    昨年はモチと香り米の苗も育てようと挑戦してみたが、失敗してしまった。
    その原因は培養土をみのるの専用に出来なかったことがあげられる。
    一般のものでも代用できるとJAの店で勧められたが、駄目であった。
    微妙に粒の大きさと湿り気と柔らかさが違っており、圧縮して苗箱に収まる予定の土は振動でボロボロと種ごと簡単に落ってしまい、苗床に収まったふりをしたものも直に泥の中で抜け落ちていた。
    さて今年はと言うと専用培養土は注文予定の6袋は届かず、どういう訳か3袋しか届かなかった。
    田んぼの土で初めて培養土の代わりを作ってきて使ってみた。
    それだけで使うのは又失敗に繋がる恐れがあったので、届いた培養土と約半々で混ぜて使ってみた。
    種の下になる土は田んぼの土でもいいのだが、被せ土となる土は雑草の種が入っていると雑草と稲と競争になってしまって都合が悪い気がした。
    発芽率の高くなる被土だけは熱処理されている専用培養土だけを使うことにした。
    一連の伏せ作業を通してやってみて思ったことは田んぼ土で行けそうだと確信したことだった。
    専用培養土は20キロで約1000円する。
    6袋使うと6000円と我が農園としたらこんな額でも大きな出費である。
    伏せ土だけなら1袋で済みそうだ。
    1000円で済みそうなので失敗は成功のもととなり、なんとも嬉しい訳である。
    来年からは毎年冬に雪が降る前に培養土作りに汗することにしよう。
    今年初めて上の田んぼに春から水を貯めることにしてみた。
    冬の間に水を張っておくという方法も一度やってみたが、思うように雑草を抑えることは出来なかった。
    土壌に有機質がまだまだ足りなかったことが原因ではないかと思っている。
    今年は籾と糠を使ったEM菌やかんてんぱぱでの海草肥材と山整備から出たチップ材を入れて水を張っている。
    小さな赤糸ミミズの発生が活発になるようだったらトロトロ層も早くに出来上がり大成功となるだろうが、今のところはまだ判らない。
    それと田植機で植えた後の手作業での修正が結構大変で、これは田植機の性能の悪さを痛感している。浮き苗の原因は苗箱への種の薄まきがいけないと思っている。
    薄まきだと機械で一箇所に落として植えていく本数が、1〜2本となっていてひとつの苗の塊が軽すぎるのだろう。
    爪が穴を作ってそこへ苗が落ちるだけという方式を使っているこの田植機では土がしっかり付いているまとまった苗でないとふらふらと浮いて流されるわけで、昨年は半分以上ちゃんと植わらず2日掛けて手作業で浮いた苗を拾って植え直しとなった。
    田植え後除草機を掛けるのだが、通りが揃っているとそれなりに効率もいいのだが、手植え作業で半分以上植え直しをすると、通りも乱れ気味で途中から2通りが3通りになっていたり通りがなくなったりで面白いが除草機はかけづらい。
    今年は最初っから手植えで30センチ間隔でびしっとやってみたらどうだろうかと息子が言ったので、望むところだと受けて立つことにした。
    但し上の田んぼ1枚だけにしないと体力的に倒れてしまいそうだ。
    全部手植えでと言うのも一度はやってみたいと思っていた。昔だったら六角柱した骨組みを転がして筋付けをしてからやるのだろうが、そういった道具が残念ながらない。
    糸を張ってから苗箱をずらして行う方法で行ってみようかと思っている。
    農事作業は体を酷使することが多いが、それでも毎年いろんな課題をあげて取り組んで行くのでそれなりに苦労も楽しくなっている訳だ。
    やはり人生苦労が多いほうが喜びも多いということでOK牧場ということだろうか。
  • 『レッツ所得補償』 by葉
    先日、市役所から一通の郵便物が送られてきた。
    薄緑色の長封筒。宛名は中野元弘様。
    今年で数えて92歳のうちの祖父宛てである。
    はてな、一体なんだろう?
    市役所からということは、農業関係の何かかな?
    首を傾げて開いてみると、予想通り、農業再生協議会からの交付金のお知らせだった。
    ――農業者戸別所得補償制度。
    販売価格が生産費を恒常的に下回っている作物を対象に、その差額を交付することによって、農業経営の安定化と戦略作物への作付転換、ひいては食料自給率の向上と農業の多面的機能の維持を促そうという制度らしい。
    毒になるのか薬になるのか、よく分からない制度だけれど、うちは対象になるのだろうか?
    緑茶片手にパラパラと書類内容をナナメ読みする。
    ええと、なになに……対象者は対象作物の生産数量目標に従って、販売目的で生産(耕作)する販売農家・集落営農組織。
    対象作物は、米、麦、大豆、そば、なたね。
    水田の場合は、飼料作物、米粉用米、飼料用米、WCS稲、加工用米、地域農業再生協議会が定める産地資金対象の作物。
    ……だそうです。まったくややこしい。
    大まかな意味は読み取れるけど、細かい基準が分からない。
    ひとつひとつの語彙に込められた事情背景を知っていないと、現場の人間以外は読めない。
    飼料作物は分かるけど、WCS稲って何だろ?
    アルファベットでわざわざ略しているところからすると、ロクなものじゃなさそうだけれど……。
    まあいいや。
    一から十まで全て読み解く必要はない。
    後ろ半分は殆ど理解出来ないけれども、少なくとも、今の自分等の農事とは関わりのないことだけは分かった。
    関係あるのは前半部分、米、麦、大豆、そばの部分だ。
    この4つなら今現在も栽培している。
    特に米と麦の2つは販売目的で栽培しているわけだから、対象となる可能性が高そうだ。
    更に資料を読み進めてみる。
    ふむふむ、……どうやら麦の所得補償は大きく2つに分かれるらしい。
    小麦と六条大麦の二種類。
    交付金の金額は、等級、ランクに応じて上下するそうなので、一律にいくらとは言い難いようだが、おおまかに真ん中の金額をとると、小麦が60キロあたり約5740円。
    六条大麦が50キロあたり約5280円。
    加えて、パン・中華麺用の三品種、ゆめかおり、ハナマンテン、ユメアサヒは、上記に2550円加算されるという仕組みらしい。
    つまり、60キロあたり約8290円。
    現在きんぴら工房では小麦を10反歩作っている。
    控えめに見て、1反歩(田んぼ一枚分、約300坪)あたり150キロ収量があった場合、……10反歩だと1500キロ。
    ということは……、うまく行けば、ざっと見積もって14万3500円の交付金が貰えるということになる。
    これは大きい。
    無視しがたい。
    人には言えない年収の我らがきんぴら工房にとってこの金額は馬鹿にできない。
    早速、申請しに行こう!
    と、その前に、……一応、問い合わせ先の松本地域センターに確認と相談をしておこう。
    送られてきた書類だけでは、足りない用紙もあるみたいだし。
    電話で連絡をとってみると、どうやら合同庁舎の近く、住宅街の只中のちょっと見つけ難い場所にセンターがあると説明された。
    走行時速20キロ。トロトロと軽トラを転がして、狭く曲がった路地に入り込む。
    うーん、確かにこれは分かり難い。
    あらかじめ地図で場所を確認していたにも関わらず、バッチリ道に迷ってしまった。
    首を伸ばして探してみても、周りは一般住宅ばかり。それらしい建物は全然どこにも見当たらない。
    とはいえ、最終的には無事辿りつけた。
    二回三回と同じ細道を往復し、いくらなんでもこの横道じゃないよなあ、と、勝手に思い込んでいた道に恐る恐る入ってみると……コンクリートの四角い建物、松本地域センターが見えた。
    想像していたよりずっと小さい。公民館を一回りほど大きく膨らませたような造り。
    通りで見当たらないわけだ。
    背が低いので、周囲の住宅街の中に埋もれ隠れてしまっていたのだ。
    遠方からでも確認できる巨大な合同庁舎とは、とてもじゃないが比べ物にならない。
    けして広くない駐車場に車を停めて、照明の切れた玄関をくぐる。
    ここでは流石に迷わない。
    廊下の壁に貼り付けられた館内表示に従って、目的の部署に向かって進む。
    失礼します、と扉を開ける。
    ねずみ色の事務机。広げられたファイルと書類。
    平均的なオフィス風景。中では一人の職員さんが忙しそうに働いていた。
    先程お電話させて頂いた中野です。ああ先程の中野さんですねと、のんびりとした会話を交わす。
    こちらの椅子にお掛け下さい。
    人当たりのいい職員さんから至極丁寧に説明を受ける。
    資料だけでは読み取れなかった疑問質問難問がひとつひとつ消化されていく。
    結果的に、やはり制度について誤解していた事がかなりあった。
    1反歩あたり2万円交付されるという営農継続支払は、収穫量から支払われる交付金の総額から、単に先払いするだけだということ。
    販売目的として栽培していることを証明するため、申請前に、販売予定先の業者と契約書を用意しておかなければならないということ。
    麦の場合、粒として販売するのか、粉として販売するのかによって、用意する書類がそれぞれ異なるということ。
    などなどなどなどエトセトラ。
    ここまで来ると誤解というより、単純に知らなかった事の方が多い。
    もっと簡単な制度だと思っていたけれど、想像以上に複雑そうだ。
    きんぴら工房は、製粉した小麦をパンに加工して販売しているので、それほど大変ではなさそうだが、人によっては物凄くややこしいことになりそうだなあ。
    なんて、この時点ではまだそんな風にのんきに構えていたのだが、その実、自分達が大変に厄介な立場にいるとはまったく思っていなかった。
    「そういえば、中野さんは等級検査はご存知ですか?」
    「等級検査?」
    「そうです。交付金の対象とする作物は全て、品質と数量の検査を受けていただく必要があるんです」
    「え?収穫した麦、全部ですか?」
    「はい、全部です。塩尻のJAさんでも等級検査をやってますので、前もって相談されることをおすすめします」
    農産物検査の受検。
    自分達が交付金を受ける上で、一番高いハードルとして立ち塞がってきたものが、JAによる等級およびランクの品質検査であった。

    〜つづく〜
  • 「お知らせ」
    ★古本販売はじめました。
    チェコの絵本作家ミルコ・ハナークの『青い鳥』や、武井武雄、初山滋等挿絵装丁の『小川未明童話全集』等あります。
    基本的には、絵本、童話の類が多め。
    農業関係の古本を増やしていこうかと画策中。


    〈今月の一冊〉
    『戦国時代のハラノムシ』 長野仁・東昇  
    『――スタマック・モンスター大集合!』
    ・戦国時代に大阪の茨木付近で書かれた医学書、「針聞書」を意訳したイラスト本です。
    当時人々を悩ませていた病気を六十三匹の虫で表し、それぞれの生態と退治方法が載せられています。不気味だけれど憎めない。妖怪じみたユーモラスな腹の虫達がてんこ盛り。
    これは好きな人には堪らない一冊でしょう。

    ★今月のきんぴらパン。
    旅のお供に……『れーずんぱん』
    ・今回紹介するのは「れーずんぱん」。
    売れないパンを紹介しているこのコーナーには珍しく、毎回顔を見せている、スタンダードな常連パンです。
    なんで今回このパンを紹介するのか?
    それには浅い理由があります。
    先月末、ちょいと四国まで原付ツーリングに行ってきたんですけども、その時食費を浮かせるために、パンをいくつか持っていったんです。
    比較的日持ちすると思われる「ふらんすぱん」と「黒麦ぱん」、「れーずんぱん」の三種類。
    最初は美味しく食べられますけど、5日、6日と時間が経つと、結構、かなり、乾燥し、ボソボソッとした味になっちゃうわけで……。
    正直、単品だとキツイ。
    パンから小麦に逆行している……。
    加熱し直せば、それほど問題ないんですけど、ツーリング中は自由に火を使う事が難しいので、そのまま囓れるものが望ましい。
    そんな状況下、唯一「れーずんこっぺ」だけは、最後まで美味しく食べることが出来ました。
    生地自体が柔らかいという事に加え、ラムレーズンの自然な甘みと水分が、食味を良くしていたのです。
    これはオドロキ新発見。
    ツーリング等できんぴらパンを持っていく方は、「れーずんぱん」を是非どうぞ。
    まあ、あんまりいないと思いますけど。


    ★きんぴら農園で取れたはぜ掛け米。
    今年はまだ在庫があります。
    5キロ2500円と10キロ5000円で販売している献上米キンピカリですが、昨年収穫量が半分となってしまったので、販売を自粛しておりました。
    今年の秋に新米が採れることを考えると、昨年収穫した米を100キロくらい販売してもよさそうな具合であります。
    献上米キンピカリは、コシヒカリの種を7年間自家採種し、同じ場所で作ったものです。
    もちろん化学肥料と農薬は使っていません。
    昨年は水持ちが悪い田になってしまい、冷たい水がいつも流れていたせいで、手前と奥との生育の差が非常に開いてしまいました。
    そのため、粒の小さいものが多く混じっており、味の方も収穫袋によって違いが出てしまっています。
    以上のことを承知した上で、注文下さると幸いです。
    自分としては十分美味しいお米だと思っております。


    ★自家栽培の小麦粉を取り扱ってくれる方募集中。
    南部小麦、ライ麦、黒小麦、スペルト麦の全粒粉。最低仕入れ3キロから対応可能。
    卸価格は定価の三割引です。
    詳しい内容はメールやFAX等でお問い合わせ下さい。
    メール:zouridaisuki@hotmail.co.jp
    FAX:0263-53-5494

    ★ホームページリニューアル。
    ・きんぴら工房のホームページをリニューアルしました。
    パンや小麦の通信販売、きんぴら通信バックナンバー、店長ブログや、原発関連情報など、様々な要素てんこもりです。

    自家栽培と天然酵母 農園パン屋きんぴら工房
    http://kinpira.zouri.jp/
    ※旧ホームページの頭からもとべます。

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